■この世をはかなみ来世に極楽往生を願う
八代市立博物館未来の森ミュージアムの秋季特別展覧会は、独自に調査した郷土の歴史・文化を、日本史・日本文化史の中に位置付ける独自の試みとして、毎年好評を博してまいりました。本年度は、日本文化史上重要な位置を占める仏教美術の中から、極楽浄土の世界を紹介いたします。
昨今の先行きの見えない世の中では、心の癒し・平安を求める声が日々高まっているように感じられます。そして歴史を振り返れば、天災・疾病・あるいは人々の政権争いが続いた時代、現代以上に混沌とした時代は幾たびもありました。人々は「生」「老」「病」「死」の苦しみを日常的に目の当たりにし、そのような時代、人々が見出した希望の光が、来世において極楽浄土へ往生するという浄土教の教えだったのです。
併せて、県内初の試みとして、肥後ゆかりの作品を通じて、熊本・肥後における浄土教の展開をたどります。肥後では、平安時代以降に天台宗寺院が建立され、この頃から本格的な浄土信仰が始まったと考えられます。続く鎌倉時代には、法然上人の高弟鎮西(弁阿)上人が肥後の往生院で『末代念仏授手印』を撰述、浄土宗鎮西派の祖として肥後に貴重な足跡を残しています。また、近世には浄土真宗寺院が多く建立され、現代に至るまで厚い信仰が続いています。本展では、熊本県立美術館や八代市立博物館未来の森ミュージアムが開館以来進めてまいりました寺社調査等の成果をふまえ、県内に伝来する浄土教美術の作品を紹介いたします。
この展覧会を通じて、私たちは、過去に生きた人々の心の営みをたどり、これからの生き方を考えるうえで、大きな示唆を得ることができるものと存じます。
◆出品リスト(PDF)◆
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