「第20回やつしろのお雛祭り」(令和4年2月12日〜3月6日)の開催にあわせ、八代城主松井家の女性たちが着用した小袖(こそで)や打掛(うちかけ)など12領を展示します。
小袖とは、袖口の小さい着物という意味で、現代のキモノの原形となるものです。もともと公家の衣生活で下着だった小袖は、武家の世になると表着として認められるようになり、染めや刺繍などさまざまな文様で飾られるようになりました。小袖は、着る人の身分や時代の流行、技術の変遷を反映しながら展開し、日本の染織文化の豊かさを伝えています。
さて、武家の女性たちが好んだのが御所解文様と呼ばれるデザインです。これは風景の中に『源氏物語』や『伊勢物語』、能楽や和歌など、文芸にまつわるモチーフを隠したもので、武家の教養と美意識を示しています。
染織品は脆弱なため、残ることが稀な文化財です。松井文庫には典型的な御所解文様の小袖が、保存状態もよく残されており、こんにちこれらを鑑賞できるのはたいへん幸いなことです。
我が国の染織文化の豊かさを見ることができる美しい小袖の数々をお楽しみください。
「小袖の美」解説シート