平成15年12月9日〜平成16年1月18日 |
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宴の彩りと題し、重箱や提重など飲食の器を中心に展示しています。
お花見など、野外で食事をするときなどに用いられた提重は、いわばピクニックセット。
ご馳走を詰める重箱をはじめ、取り皿やお酒を入れる銚子など、様々なものが内蔵されています。
文様の美しさもさることながら、その収納力には驚きます。
美しい金銀の蒔絵と、様々な器の形をお楽しみください。 |
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桜樹文蒔絵提重
(おうじゅもんまきえさげじゅう)
江戸時代後期 Portable tiered
box for lunch
提重は、提げて携帯できるようにしたもので、重箱をはじめ、取り皿、銚子、盃、盆などがおさめられています。
この提重は、黒漆地に満開の桜をモチーフにしたデザインで、上面には、お花見をする恵比須・大黒天・布袋らが表されています。幔幕の模様など、細部にいたるまで細かく表現されているのが見所です。取り皿には、芙蓉に菖蒲・椿に梅・笹に鉄線・百合などなど四季の草花が表されています。(図1) |

図1 |
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図2 |
桜樹文蒔絵重箱
(おうじゅもんまきえじゅうばこ)
江戸時代後期 Lunch box
金や銀の粉を蒔いたものを、梨の表面に似ていることから、梨地と呼びます。この重箱は、銀粉をすきまなく蒔いた詰梨地に桜の樹を表しており、堂々とした桜の幹が下から上に立ち上がり、蓋上面へと連続しています。
裏面でも、同じ構図で桜の幹が描かれています。桜の花や葉は、金や銀、青金の3色が使われており、色合いの変化をつけることよって、ボリュームある桜の樹を見事に表現しています。(図2)
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枇杷図蒔絵提重
(びわずまきえさげじゅう)
江戸時代後期 Portable tiered
box for lunch
上面に枇杷、重箱の蓋の上に柿を表しています。柿の実には、朱をぼかしたように入れることによって、より写実味を出してています。
重箱の側面には、亀甲繋に菊花・牡丹唐草・七宝繋に紅葉・岩に笹図など細かい文様が表され、取り皿には、桜・梅・紅葉・薄・秋海棠が描かれています。これなら季節を問わず用いることができるでしょう。(図3)
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図3 |
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山水文青貝六角提重
(さんすいもんあおがいろっかくさげじゅう)
江戸時代後器」天保3年(1832)拝領
Portable tiered box for
lunch
蝶番によって三部に開き、閉じると六角形になるという面白い構造の提重。内部には、六角形入れ物、菱形重箱、菱形銘々皿などをおさめています。
天保3年(1832)藩主がくにざかい国境視察の途中、日奈久へ立ち寄った際、松井家に下賜したものとの伝来があります。この提重と同じ構造のものが、シーボルト(1796〜1866)が日本から持ち帰った品物の一つとして、オランダにも残されています。(図4) |


図4(中を開いたところ) |
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図5 |
若松に橘文蒔絵重ね菱形提重
(わかまつにたちばなもんまきえかさねひしがたさげじゅう)
江戸時代後期 Portable tiered
box for lunch
黒漆地。上段に重ね菱形の四段重、下段に同形の入れ物をおさめています。重箱の片面には若松に橘、もう片面には梅樹を表しています。竹の幹状に彫り出され、金箔をはいだような変わり塗の提手が目を引きます。(図5)
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鳳凰唐草文漆絵提重
ほうおうからくさもんうるしえさげじゅう
江戸時代 Portable tiered box
for lunch
エキゾチックな趣の小型の提重。黒漆地に赤・茶・緑の色漆で鳳凰・石榴・唐草文などを表したもので、中国あるいは琉球(沖縄)製と思われます。この提重をおさめた箱に「大樹院様」から譲られたものと記されていますが、今のところ誰のことかはわかりません。(図6)
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図6
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図7
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竹網代貼菱形提重
(たけあじろばりひしがたさげじゅう)
江戸時代後期 Portable tiered
box for lunch
正三角形を二つ合わせた菱形の提重。外枠には竹を網代に編んだものを貼った瀟洒(すっきりときれいなさま、あかぬけているさま)な作りです。内部には、正三角形の銘々皿五枚・重箱二組をおさめています。重箱の蓋などに桜の花を青貝細工で表し、可憐な感じのする提重です。(図7)
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三ッ笹紋蒔絵茶弁当
(みつざさもんまきえちゃべんとう)
江戸時代後期 Portable tiered
box for lunch
野外でお茶を点てるときに、釜や水指などの茶道具を入れて運ぶ家形の入れ物を茶弁当といい、担い棒の両端に通して担ぎます。
この茶弁当には、角型のヤカンと銚子、重箱などがおさめられています。一方のヤカンには、内部に炭を焚くスペースがあり、独立して湯を沸かす仕組みです。ここにお酒を入れた急須を入れて燗をつけます。もう一方のヤカンには、たくさんお酒が入りそうです。(図8)
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図8 |
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図9 |
唐草文蒔絵食籠
(からくさもんまきえじきろう)
江戸時代後期 Nest of boxes
食籠は、食物を入れるほか贈答用や室内飾りとして用いられた入れ物です。この食眥は、黒漆地に唐草文を金平蒔絵で表しています。織田信長(1534〜82)よりの拝領品として伝来していますが、製作時期はもっと新しいものと思われます。あるいは、実際に拝領したものを写して作ったものかもしれません。(図9)
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桜九曜紋唐草蒔絵食籠
(さくらくようもんからくさまきえじきろう)
江戸時代後期・享和3年(1803) Nest
of boxes
肥後熊本藩主細川家の家紋である九曜紋と桜紋を唐草文とともに表したもので、金色の輝きが美しい食籠です。金色の粉がすきまなく蒔かれた部分を梨地といいますが、これには梨地粉と呼ばれる、金や銀または錫の箔片を小さくしたものを用いています。銀や錫の粉でも、金色に見えるのは茶味がかった漆の層に沈んでいるためで、深く沈んでいるほど濃い金色に見えます。(図10)
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図10 |
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唐人図螺鈿食籠
(とうじんずらでんじきろう)
中国・明時代 Nest of boxes
黒漆地。蓋上に唐人図、側面に菊・松に鶴・梅にうぐいす・芦雁・さぎ・兎・ヤギ・鹿・麒麟などを螺鈿で表しています。
螺鈿とは、アワビ貝などの光沢のある部分を薄く剥いで、文様の形に切りとってはめ込む技法で、虹色の輝きが魅力です。青貝細工ともいいます。(図11)
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図11 |
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図12 |
梅樹格子に九曜紋蒔絵重箱
(ばいじゅこうしにくようもんまきえじゅうばこ)
江戸時代後期 Nest of boxes for
lunch
霞状に梨地粉を蒔いた叢梨地に、格子のように梅の樹を組み合わせ、九曜紋を散したデザインです。梅の花は、金・銀・赤味を帯びた金の3色、九曜紋は、金・青金(黄味がかった金)の2色で蒔絵されているので、変化に富んだ輝きを見せます。(図12)
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扇散蒔絵重箱
(おうぎちらしまきえじゅうばこ)
江戸時代後期 Nest of boxes for
lunch
詰梨地に扇を散したデザイン。扇の中には、鶴・亀・芦雁・千鳥・菊に蝶などを表しています。扇の要には、実際の扇のように鋲を打ち付けています。松井家十代章之夫人・貞操院(1813〜48)の所用品です。(図13)
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図13 |
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図14 |
九曜紋・桐紋蒔絵重箱
(くようもんきりもんかいえじゅうばこ)
江戸時代後期 Nest of boxes for
lunch
黒漆地に、九曜紋と桐紋(五七桐)を配したデザインです。蓋上部の紋は、金蒔絵で表されていますが、側面の紋は全て銀蒔絵で表されています。華美さはありませんが、落ち着いた洗練された趣のある一品です。こうした家紋散のデザインは伝統的なものですが、現代のルイ・ヴィトンのモノグラムにも通じるものがあります。(図14)
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麻葉繋に草花丸文蒔絵重箱
(あさのはつなぎにくさばなまるもんまきえじゅうばこ)
江戸時代末器」嘉永6年(1853) Nest
of boxes for lunch
黒漆地。銀で表した麻葉繋文の上に、牡丹・桜・梅・菖蒲・鉄線・萩・藤・松・竹・水仙・桔梗・百合などさまざまな草花を丸文様にして表しています。部分的に金貝、朱漆を用いてアクセントをつけています。草花の種類はたくさんありますが、文様のパターンは向い合った面で同じです。蓋がもう一枚付属しているので、五段重として使えるほか、二段重・三段重として同時に使うこともできます。(図15)
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図15 |
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図16 |
竹文蒔絵提重
(たけもんまきえさげじゅう)
江戸時代中期 Portable tiered
box for lunch
外枠の両側面が蓋になっており、内部に蘭の花を主要モチーフとした重箱・角形酒器・銘々皿・盃などをおさめています。金と銀、朱漆を用いての繊細な表現が目を引きます。外枠の下方に「古満巨柳作」の作者銘があります。古満家は幕府のお抱え蒔絵師で、初代の休意は江戸城内紅葉山仏殿、二代休伯は日光東照宮の蒔絵にたずさわりました。巨柳は、五代休伯の門人で古満姓を許され、安永・天明年間(1772〜89)頃活躍した人です。古満家の特徴は時流にのった華やかさにあるといわれ、この提重にもその片鱗がうかがえます。(図16)
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