
殿様が持ち帰った”江戸土産”に見る日本文化の”粋”
肥後熊本藩筆頭家老であり、八代城主として藩主細川家を支えた松井家は、幕府からも知行地を与えられていたため、家督相続と将軍代替わりの際には、当主が江戸へ赴き、将軍に拝謁する習わしでした。一生のうち数回しかなかった江戸参府は、地元では手に入らない高級品を買い求める絶好の機会でもあったようです。
本展では、松井家が持ち帰った江戸土産をズラリ展示します。このうち、紙入や筥迫、巾着袋など、手回り品を入れて携帯するための小さな袋物は、象牙や鼈甲、金襴や更紗、水晶や珊瑚などの珍しい材料が用いられ、蒔絵や象嵌などの細やかな技巧で飾られています。これらは、日本橋付近の有名な小間物屋で購入したもので、まさに当時の日本文化の粋を伝える品々といえます。
古今を問わず、人々はお気に入りの道具を持つことで心を落ち着かせ、細やかな手仕事に宿る美を愛でることで豊かな心を育んできました。当館の主要事業として取り組んできた松井文庫所蔵品調査の成果を通じて、日本文化の持つ豊かさや繊細さ、遊び心を楽しんでいただければ幸いです。
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